こちらの記事は、令和6年12月末までに中小企業庁から情報提供された内容を基にしています。現時点での中小企業新事業進出補助金の詳細ガイドとして、Part1とPart2の2回に分けてお届けしております。
今回はPart2です。こちらの記事を読む前にPart1をご確認ください。
Part1はこちら
1.はじめに
2.中小企業新事業進出補助金の概要
3.中小企業新事業進出補助金の目的やリスク
4.中小企業新事業進出補助金の対象となる中小企業等
5.中小企業新事業進出補助金5つの基本要件
① 申請前2つの基本要件
② 実施後3つの基本要件
Part2はここから
目次
6.中小企業新事業進出補助金の補助上限額や対象経費
①補助上限額
中小企業新事業進出補助金の補助上限額は以下の通りです。
従業員数20⼈以下:2,500万円(3,000万円)
従業員数21〜50⼈:4,000万円(5,000万円)
従業員数51〜100⼈:5,500万円(7,000万円)
従業員数101⼈以上:7,000万円(9,000万円)
※補助下限750万円
⼤幅賃上げを行う場合(事業終了時点で①事業場内最低賃⾦+50円、②給与⽀給総額+6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。(上記カッコ内の⾦額は大幅賃上げ後の上限額)
補助率は1/2であり、企業の従業員数に応じて補助上限額が設定されています。例えば、従業員数が20人以下の企業は最大2,500万円までの補助を受けることができ、従業員数が101人以上の場合は最大7,000万円までの補助を受けることができます。このように、規模に応じた柔軟な支援が行われることで、より多くの中小企業等が新事業に挑戦しやすくなっています。
ただ、補助下限額が750万円に設定されていますので、少額での取り組みを検討している中小企業等には不向きの制度と言えます。補助率が1/2ですので、対象経費の総額が1,500万円未満になる場合は、ものづくり補助金など他の補助金を検討しましょう。
②対象経費
中小企業新事業進出補助金の補助対象経費には、建物費、構築物費、機械装置費、技術導入費などが含まれます。具体的には、工場や店舗の建設にかかる費用や、生産設備の購入、外部からの技術指導に要する経費が該当します。これにより、企業は新たな市場や高付加価値事業への進出を図ることが可能となります。特に、広告宣伝費も対象となるため、自社の販促活動においても有効に活用できる点が魅力です。
個人的には事業再構築補助金では補助対象外だった、構築物費が含まれたのは大きいと思っています。事業再構築補助金では建物費なのか構築物費なのか迷う案件で、支援先様から事務局に聞いていただいても明確な回答が返ってこないケースが多かったからです。
ちなみに建物と構築物の違いは、建物に附属しているかどうかです。建物に附属している場合は建物付属設備、附属していない場合は構築物(例:舗装道路、塀、上下水道、焼却炉、花壇、庭園、広告塔等)ですが、判断に迷う場合は顧問税理士に確認しましょう。
その他、事業再構築補助金との違いは、現時点でのリーフレットには研修費が含まれておりません。事業再構築補助金では事業遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費は認められていましたが、本補助金では認められていないようです。
中小企業新事業進出補助金の具体的な補助対象経費は以下の通りです。事業再構築補助金の公募要領を参考にしており異なる場合がありますので、公募要領が発表になりましたらご自身で最新情報をご確認ください。
<建物費>
※建物の新築については必要性が認められた場合に限る。 ・補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
・補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
・補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費
・貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費(貸工場・貸店舗等の賃借料、貸工場・貸店舗等への移転費等)
<構築物費>★注目★今回追加
公募要領が発表にならないと詳細は分かりませんが、事業再構築補助金で対象外とされていた駐車場や庭園などのエクステリア工事も認められる可能性があります。
<機械装置・システム構築費>
・補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費
・補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費
これらと一体で行う、改良、据付け又は運搬に要する経費
<技術導入費>
本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費
<専門家経費>
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
<運搬費>
運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
<クラウドサービス利用費>
クラウドサービスの利用に関する経費
<外注費>
本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
<知的財産権等関連経費>
新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費
<広告宣伝・販売促進費>
本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費 新事業に取り組む際の最大の課題は、見込み客(リード)の獲得・育成・顧客化です。新事業の設計段階から必ずマーケティング戦略を組み立てましょう。その際にかかる経費は、広告宣伝・販売促進費として申請することが可能ですので効果的に活用しましょう。当社はマーケティング支援もしておりますので、遠慮なくご相談ください。
7.中小企業新事業進出補助金の注意点
① 必要書類の多さ
本補助金の前身ともいえる事業再構築補助金の申請には、事業計画書、決算書、金融機関や認定経営革新等支援機関による確認書、ミラサポplusの事業財務情報などが必要です。これらの書類は、申請者が新たな事業に取り組む意欲や計画を示す重要な要素となります。特に事業計画書は、事業の目的、実施方法、期待される成果を詳細に記載する必要があり、審査の際に大きな影響を与えるため、慎重に作成することが求められます。
申請前には、チェックリストを活用して不備がないか確認しましょう。提出書類に不備があると、審査の対象外となるため、最新の様式を使用することが極めて重要です。各回に公表される公募要領を確認する必要があります。
② 交付決定までは投資不可
・交付決定前に発生した費用は対象外
補助金の原則として、交付決定日より前に発生した費用は補助金の対象外となるため、事業計画を進める際には注意が必要です。採択通知は交付決定ではない点に留意しましょう。
・事業開始が遅れる可能性
交付決定を待たなければ事業に着手できないため、事業の開始時期が遅れる可能性があります。スケジュールを事前に確認し、余裕を持った計画を立てましょう。
・資金繰りへの影響
補助金を前提に事業を進める場合、交付決定までの期間中に他の資金調達が必要となる可能性があります。補助金に頼りすぎず、自己資金や借入金を活用する計画を考慮しましょう。
③ 後払い方式
・立替資金が必要
補助金は後払い方式が一般的であり、支出を行った後に事後精算となるため、事業費の全額または一部を一時的に自己負担する必要があります。資金が不足する場合、事業継続が困難になるリスクがあります。十分な運転資金を確保し、事業費を立て替えられる体制を整えましょう。
・採択後の煩雑さ
領収書や契約書などの証拠書類の提出が求められ、申請者の事務負担が増大します。書類不備や手続きの遅れにより、補助金の受領が遅れる可能性があります。チェックリストを活用して証拠書類を漏れなく準備しましょう。
・不認定の可能性
経費が補助対象外と判断された場合、全額自己負担となる可能性があります。
④ スケジュールの長期化
・審査期間が長い
補助金の申請から採択通知、交付決定まで数か月かかることがあります。
・事業完了期限が設定されている
交付決定後、指定された期間内に事業を完了しなければならないため、計画の遅れが許容されない場合があります。補助金申請時の計画からの変更には、事前に申請し承認を得る必要があり、柔軟な対応が難しくなります。進捗状況を定期的に確認し、問題が発生した場合は早めに相談しましょう。
・報告期限の厳守
実績報告や事業化報告(事後確認)の提出期限を守らなければ、補助金の返還を求められることがあります。提出期限や事業完了期限に厳しいため、余裕がないと対応が難しい場合があります。余裕を持ったスケジュールを作成し、関係者との連携を密にしましょう。
8.今後の展望
中小企業新事業進出補助金は、企業の成長を促進し、経済全体の活性化に寄与することを目的としています。この補助金は、特に新市場や高付加価値事業への進出を支援するものであり、企業が新たな挑戦を行う際の重要な資金源となります。これにより、中小企業は競争力を高め、持続可能な成長を実現することが期待されています。
この補助金を活用することで、企業は新たな市場への進出や生産性の向上を図ることが可能です。具体的には、設備投資や新製品の開発、サービスの向上に資金を充てることができ、これにより競争力を強化し、業績の向上を目指すことができます。特に、既存の事業モデル以外の新たな挑戦が求められる現代において、この補助金は企業の成長戦略において重要な役割を果たします。
補助金の制度は、経済情勢や政策の変化に応じて見直されることがあります。そのため、企業は今後の詳細発表や変更に注目し、最新情報を常に確認することが重要です。特に、申請方法や補助金の条件が変更される可能性があるため、公式な情報源を定期的にチェックすることが推奨されます。これにより、企業は適切なタイミングで申請を行い、最大限の支援を受けることができます。
補助金の活用に関しては、認定経営革新等支援機関や専門家に相談することをお奨めします。特に、初めて補助金を申請する企業にとっては、専門家のアドバイスが成功の鍵となります。ビズシア代表の高橋は、補助金支援の経験が豊富な認定経営革新等支援機関でもあり中小企業診断士です。申請書類の作成や事業計画の策定において専門的な知識を持っており、補助金を効果的に活用するためのサポートを提供します。安心してご相談ください。
最新情報の収集リソースは、中小企業庁の令和6年度補正予算・令和7年度当初予算関連、支援策チラシ一覧をご覧いただくのがお奨めです。令和6年度補正予算・令和7年度当初予算関連では、中小企業や小規模事業者に関連する支援対策予算のポイントなどが確認できます。支援策チラシ一覧では、各種補助金のリーフレットが掲載されており、手早く概要を確認することができます。
今回はここまで。前回に続いて今回も中小企業新事業進出補助金の解説をしました。既存事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出を検討している中小企業等の皆様は、本補助金の活用をお奨めいたします。
ビズシアでは、現在オンライン無料相談を実施中です。すでに多くの相談が寄せられており、今後も増えていく予定です。申込順に日程を調整させていただいておりますので、公募が始まる4月頃には対応できなくなる可能性がございます。中小企業新事業進出補助金のみならず何かしらの補助金の活用を検討している企業様は、なるべくお早めに無料相談にお申込みいただくようお奨めたします。
補助金に関するオンライン無料相談はこちらからお申込みください。
⇒ お問い合わせフォーム